原点回帰:なぜ再び東京に戻ったのか
親愛なる同僚、友人、そしてパートナーの皆さまへ
この度、日本に戻りTalentHub Partners株式会社を立ち上げるにあたり、その背景をお伝えしたいと思います。
日本で築いたキャリア
東京は、私の人生において常に中心的な存在でした。最初の出会いは東京大学への留学で、この経験が日本への強い関心を生み、その後のキャリアの土台となりました。私はBoyd & Mooreの初期メンバーの一人としてキャリアをスタートし、その後RGF Executiveのリーダーを経て、Experis Executiveを創業しました。同社はエグゼクティブサーチとRPO事業で信頼を得て、最終的にManpowerGroup Japanに買収されました。また、VMwareではRPOデリバリーを統括しつつ、市場参入コンサルティングも並行して行い、クライアントとエージェンシー双方の視点を得る貴重な経験となりました。
三つの会社から学んだこと
日本に戻る準備を進める中で、自らの歩みを振り返りました。3社のエグゼクティブサーチ会社がそれぞれ成功裏に買収される過程に関われたことを誇りに思います。私の貢献は一部に過ぎませんが、成長の物語の中で小さくとも意味のある役割を果たせたと信じています。何よりも、その一つひとつの経験から、リーダーシップ、チーム作り、市場に合わせて進化することの大切さを学びました。これらの教訓は、今まさにTalentHubに生きています。
家族を第一に
日本は、私の家族にとっても大切な拠点です。妻は日本人で、3人の息子たち(いずれも日本国籍)は東京で育ちました。その後、ニュージーランドで教育を受けさせることを決めたのは、日本での基盤に加え、家族や従兄弟との交流、英語教育を通じた国際的な視野を持たせたいと考えたからです。その数年間は、私にとってもかけがえのない時間でした。東京で多忙を極めた時代には得られなかった、子どもたちの学校生活やスポーツ、日々の成長を間近で見守ることができたのです。同時に、共同創業者であるKonstantin Ivanovとともに、Referable(リファラル獲得型SaaSプラットフォーム)を立ち上げ、基盤を築いてきました。
With my family in Tokyo — Japan has always been our home and now we’re back!
南半球での学び
私たちはパイロット導入でコンセプトを証明できましたが、既存ネットワークのないブートストラップ型ベンチャーにとって、ANZ市場に食い込むのは非常に困難でした。テクノロジーは機能しても、承認サイクルは遅く、市場は飽和状態。パイロットが成功しても成長は難しいとすぐに理解しました。試行錯誤と方向転換を重ねる中で、「基盤は正しい、あとは適切なタイミングと市場だ」という確信を得ました。
東京への帰還
2024年、タイミングは明らかでした。長男はオークランドの大学を卒業し、家業を継ぎながらバレーボールのナショナル代表を目指していました。次男は東京の大学へ戻り、三男はまだ高校生。家族の生活リズムが再び変化し、私が日本に戻る時が来たのです。戻ってみると違和感は全くなく、到着後わずか24時間で旧知の同僚に街角で再会しました。オークランドでは決して起こらないことです。東京こそが私のネットワークの拠点であり、今も「帰ってきた」と感じられる場所です。
変わったこと、変わらないこと
再び日本の採用市場に立って感じたのは、基本は変わらずとも課題が一層鮮明になっているということでした。クライアントは依然として「最大の難題は人材確保」と言い、エージェンシーは「クライアントは簡単だが、候補者が難しい」と言う。FindyやBizReachのようなデジタルツールは成長しましたが、結局はオペレーター依存。成功報酬型モデルが主流であり、LinkedInの高騰に不満を漏らしながらも、いまだ必須ツールです。Job Miruは有望で、8cardも潜在力があります。
RPOとテクノロジーへの集中
この状況を踏まえ、戦略を再調整しました。手を広げすぎず、RPO(採用代行)に集中することでテクノロジーの価値を最大化できると判断したのです。初期のリファラルマッピングやマイクロサイトは進化し、クライアントが自社のストーリーを発信できる一方で、エージェンシーは自らのプロフィール、実績、推薦文、さらには面談予約カレンダーまで追加できるモジュールとなりました。従来の求人票を送るだけでなく、候補者が信頼できる構造化されたブランドコンテンツを提供でき、クライアントは「どのエージェンシーが真のパートナーなのか」を見極められるようになります。エグゼクティブサーチも依然として重要であり、AIによる候補者スコアリングや市場マッピングで支援していますが、短期的にはRPOこそが最も力を発揮する領域です。東京のエージェンシーの多くはいまだ10年以上変わらないワークフローに依存しており、一部の先進的な会社を除けば、クライアント側の一貫性やコントロールは欠けています。私たちはそこを変えていきます。
市場のニーズに応える
採用のデジタル化需要は現実であり、日本市場では特にその必要性が高まっています。TalentHubの目標はシンプルです。「本当に機能する採用ソリューション」を提供すること。エージェンシー・アクティベーション、タレント・ブランディング、リファラル・マッピング、チャネル最適化という4つのコアモジュールを通じて、クライアントとエージェンシーの協働を改善し、候補者体験の質を高め、採用プロセスを以前より良い形に残すことを目指しています。
パートナーという存在
社名にある「Partners」はクライアントだけを意味するものではありません。私たちはエージェンシーとも真のパートナーとして協働し、彼らに安全でプライベートな形で同じツールやマイクロサイトを提供します。これにより、どのエージェンシーも一貫性と信頼性を持って成果を出せるようになり、業界全体の水準を引き上げることができます。
ローンチに向けて
現在は最終準備段階であり、厚生労働省への有料職業紹介事業許可申請も提出済みです。TalentHub Partners株式会社は、エグゼクティブサーチ、RPO、そして将来的なプラットフォームのホワイトラベル展開を支える基盤構築に注力しています。設立時のパートナー選定を誤り、半年以上遅れましたが、その分モジュールを磨き込み、本質的に大事なことを見極める時間が得られました。すでに日本内外のRPOプロバイダーから関心を寄せられており、ホワイトラベルの可能性についても話が出ています。東京での拡大、ニュージーランドでのSaaS構築、リファラルの実証、そして今回の帰還——過去10年の学びがすべてこの地点に結実しました。
次の章へ
これは私自身にとってだけでなく、私たちが支援するリクルーターやクライアントにとっての次の章でもあります。家族にとっても、日本での生活の延長線上にある物語です。東京は私のキャリアが始まった場所であり、子どもたちが育った場所であり、私たちのルーツがある場所です。これまでに築き、拡大し、そして一度は手放したこの地で、再び未来に向けて新しい挑戦を始めます。
お読みいただきありがとうございました。これからの歩みを引き続き共有していければ幸いです。
クラーク・マレー
TalentHub Partners株式会社 共同創業者